grouper@鈴ん小屋

 ryonkt

  • 日本のアーティストは彼だけだったようで 音楽的にも日本のアンビエントらしく奥ゆかしいものだった 昂揚感を覚えるには起伏がないし 酩酊感を与えるには深度が足りない そんな感じ 音量が小さかったっていうのもあるかもなぁ……

 concern

  • 音が重なって 解けて また重なって という揺らぎが混沌としていて 個人的に一番好きだった 演奏の終わり 叫び声のような大音量のノイズがふっと消えて彼が頭を下げるその瞬間まで 多くのものを音楽に明け渡せていた ような気がした

 ben vida

  • grouperとsun circleのgreg devis以外なんの前知識もなしで行ったから 音楽の入りでは 「可愛げのない初期のwegみたい」というようなことを思ったけれど 演奏が続くにつれだんだんとその印象は薄らいでいった ここまで演奏時間は全て30分ずつで ここまで良い人達ばかり集めたのだったらもっと長い時間取れば良いのに

 grouper

  • 演奏前 テーブルの上にカセットテープをかたかたと並べている時から ずっと楽しみだった 終わってみて気がついたけれど 彼女だけ演奏時間が少し長かったみたいだ そんな風には感じなかったけれど

 sun circle

  • g r e g  d e v i s の 髭 が 相 変 わ ら ず す ご か っ た ! !


grouperが来日するんですよ」と教えてくれたのは知り合いのYさんで 調べてみるとsun circleというユニットも一緒みたいだったから それならとgreg devis好きの友人を誘った Kさんは仕事の都合でworld's end girlfriendのライブには行けないということだったけれど 月末でなければなんとかなるかもとの返事をくれ 前日までは「大丈夫行きます」と言っていたにも関わらず 当日になって風邪を引いてしまい 「やっぱり無理」と言い出した 残念ですまた次の機会に と返事をして 会社を出た
 Yさんとは会場の入り口で会い


「靴を脱ぐんですね 初めて来たから……」


「僕も初めてです ここ」


 と 距離を測るような会話をして地下へ降りた 彼女は友人を一人連れていて 当日券を買うために先に会場入りしていた小さな女の子を僕に紹介した goldmundが好きらしい物静かな女の子で 挨拶もそこそこに彼女は少しだけ離れた場所に座ってしまうと それ以降は話すこともできなかった 遠くに座っちゃいましたけどいいんですか? と訊いてもYさんは「そうですね」と笑うだけだったので もう以降そのことには触れずに 時折帰ってしまってはいないことだけ確認していた
 開演の19時まで 緩いアコギのインストと徐々に積み重なる雑音の中で Yさんと少し会話をしていたが 僕等は二人とも声が小さく 隣の席に座りながら電波の悪い携帯電話のようだった 彼女は――おそらく自分の存在をかけていた――あることを止め また別のあることを始めたと言っていた そして今が楽しいとも


 ライブが終わり 終電が危ないという二人と駅まで歩きながら 後ろを並んで歩く少女達の声を聞くともなしに聞いていた ライブの感想や派手な電飾の建物について 昨日してしまった忘れ物の話と今日してしまった忘れ物の話 線路沿いの公園でパフォーマンスの練習をする男の子について 女の子のなんでもない会話は どんな実のある会話よりもきらきらとしている
 22時を過ぎてなお人の多い構内を歩きながら 通りがかったコンビニの前で何か飲み物でも買ってあげようかと思ったが クランベリージュースをあんなにゆっくりと飲む女の子が今更飲み物を喜んでくれるとも思えず 人の多い駅の構内でさらりと別れておわった



 例えば長い文章を書いている時 その書き重ねてきた全てが無意味なものであると錯覚し手が止まる瞬間が 僕には必ずやってきて 一度手放してしまったそれらに新しい意味を与え無理に続けようとするのは不誠実なことなのではないかとずっと思っていた けれど 多分それは違うのですね
 文章に限ったことではないけれど 他人がその人自身のためにした選択は間違いでないと確信できるのに 自分ばかりが間違っているような気がするのはなんなのでしょうね 感情の絡まない主観と客観にはたいした違いなんてないっていうのに